言いながら、自嘲の笑みを零した栞に胸が締め付けられて、苦しくて、たまらなかった。
だけど、目の前にいる彼女は。
不安に震える手をなんとか俺に気付かれまいと必死に隠し、必死に恐怖に抗おうとする彼女は、今日までたった一人でその苦しみを抱えてきたんだ。
自分の声を失うほどに心を砕かれ、それでも懸命に今日まで“罪”を背負って生きてきた。
大好きだった父親を貶され(けなされ)、蔑まれ。
それでも懸命に、彼女は家族を守ろうと必死になっただけなのに。
大切な家族との思い出を。大切な家族との時間を消されてしまわぬようにと、残酷な運命に12歳だった彼女は必死に抵抗しただけなのに。