* * *




「(それから……もう、その中学校にはいられなくなってしまって。学校とも話し合って、隣町の中学に転校したんです)」



栞から聞かされた話しは、重く深く、俺の心を押し潰した。


全てを聞き終えた時に、自分はそれになんと言葉を返したらいいのか。なんと彼女に声を掛けたらいいのか、わからなくなってしまって思わず眉根を寄せる。


大変だったね、辛かったね、なんて。そんな安易な言葉を紡ぐ気にもなれないほど。


それほどまでに彼女の過去は壮絶で、悲しみに濡れていた。



「(隣の中学でも……、しばらくは噂とかのせいで爪弾きにされてたんですけど……。でも、そこには小さい頃に家が近所だった幼馴染みの蓮司がいて。蓮司が……学校では、ずっと側にいてくれたんです)」


「……、」


「(本当は、こんな風に普通に生活をしてたらいけないということもわかってます。
でも……あの事故以来、お母さんも周りにキツく当たられていたりして……。だけど、お母さんは何を言われても堂々として、自分たちだけでもお父さんを信じるんだ……って。いつもいつも、私の前では明るく振る舞ってくれてて。
だから、私も……私も、これ以上、お母さんを悲しませるわけにはいかないから、出来る限り前を向いていなきゃって思って……)」


「……、」


「(そんなこと言っても……声が出なくなっちゃったから、結局お母さんのことは悲しませてるに違いないんですけど……)」