……だからこそ、私は未だに信じられないんだ。
安全運転を常に心掛けていたお父さんが、あんな事故を起こしただなんて。
お父さんが愛したバスが、お父さん自身の命を奪っただけでなく、お父さんが大切に思っていたお客さんたちの命まで奪ってしまったこと。
もしも天国なんてところがあるのなら、お父さんは今頃きっと泣いている。
自分が大好きだったバスに、あんな事故を起こさせてしまったこと。
自分のお世話になっていた会社に、たくさん迷惑を掛けてしまったこと。
罪のない人たちの命を奪ってしまったこと。
─── 私たち家族を、悲しませてしまったこと。
お父さんはきっと、何度も懺悔を繰り返し、あれからずっと悔やんでいるに違いない。
だからこそ、人殺し、なんて。
お父さんのことを何も知らない人たちに、そんなことを簡単に口にして欲しくなかった。