思わず全身から冷や汗が噴き出し、立ち上がるとその人から逃げるように一歩、後ろへと足を引く。
けれどその人は、そんな私を追いつめるかの如く、息も掛かりそうな距離で私を見つめた。
「警察の見立てでは、昨日の酷い嵐で視界が悪かったということが原因、と。それで、バスの運転手の前方不注意だったと言われているようですが……ほら、それ以外にも、ご家族なら何か思い当たる節でもあるかと思いまして」
「そ……そんなのっ、ありません!父は、昨日もいつも通りでしたっ」
「ほう、それなら、ご家族の知らないところで何かあったんでしょうか?」
「し、知らないところで……?」
「例えば、家族に後ろめたいことがあって、それがストレスになっていたとか。借金があって首が回らなくなっていたとか。その他にも家庭外で─── 」
「……すみません。ここは病院ですので、そういったことはお控えください」
「……っ、」