「……お母さん、どうしたの?お父さん……何か、あったの?」


「っ、」



慌ててテレビを消して立ち上がり、お母さんへと駆け寄れば漸く我に返ったらしいお母さんが私へと視線を向けた。


私を見た途端、その瞳にはじわじわと涙の膜が張り、赤く色付いた鼻の頭を隠すように、お母さんは震える唇に手を添えた。



「……お母さん?」


「い、今……お父さんの会社から、電話があって……お父さん、事故だって。それで……お父さんも、瀕死の重体みたいで、今から、病院に─── 」



そこからは、何がなんだかわからぬまま、お母さんと車に飛び乗ると、嵐のような雨の中を必死に病院まで向かった。


病院に着く直前、真っ黒な空に翔けた稲妻。


雷がどこかに落ちた音が、やけに鮮明に響き渡ったことを覚えてる。