─── そしてそれは、その日の夕方。
「はい、もしもし。はい。…………え?主人が?」
リビングでソファーに身体を沈めながらテレビを見ていると、突然掛かってきた一本の電話。
それに出たのはお母さんで、初めはいつも通りに応対していたお母さんの声色が、段々と震えた声に変わっていった。
「わ……わかりました。それで……あの、主人の容態は……?」
「え?お父さん?」
「はい、はい……。わかりました。今すぐ。今すぐ……娘と、向かいます」
そうして、それだけ言って電話を切ったお母さんは、その場に立ち竦んだまま、呆然とどこかを見つめていて。
そんな、普通ではないお母さんの雰囲気と、ほんの少し聞こえた会話に私の心も不安に染まっていった。