「きゃ……っ!!」
と、突然。
背後でガチャン!!という何かが割れる音とお母さんの短い悲鳴が聞こえて、私は弾けるように振り返った。
「お母さん、どうしたの!?」
「ん〜、ちょっと手が滑っちゃって、お茶碗を落したの。栞、危ないからこっち来ちゃダメよ」
「えー?誰のを割ったの?」
「お父さんのお茶碗。これ、お父さんのお気に入りだったんだけど……仕方ないわね。新しいの、買ってこなきゃ」
眉を下げ、残念そうに言いながら、お母さんは割れてしまったお父さんのお茶碗を片付けていく。
その姿を見ながら何故か胸がざわついて、再び外を見れば雨の悲しい音だけが何度も何度も、耳の中に木霊した。