私の家は、近所でも評判なくらい仲の良い3人家族だった。
バスの運転手をしているお父さんと、保健師をしているお母さん。
共働きの2人に、小さい頃は寂しい思いをしたこともあったけれど、2人はそれを補うように、私へたくさんの愛を注いでくれた。
いつだって明るくて、いつだって笑顔の絶えない家の中。
年甲斐もなく仲の良い2人は見ていて恥ずかしくもあり、私の自慢の両親でもあった。
「栞が高校生になったら、ぶらり途中下車でバスの旅〜とかしてみるか?」
「えー。私、やっと中学生になったばっかりだよ?っていうか、お父さん、休みの日までバスに乗ったら飽きちゃわない?」
「飽きるわけないだろー。お父さんは日本一バスを愛するバスの運転手なんだから」
そう言って、嬉しそうに笑ったお父さんのことを、私は今でもハッキリと覚えてる。