ひとしきり泣いたあと、無機質なガラスをなぞるように携帯へ手を添えた。
私が落ち着くまで、ずっと髪を撫でてくれていた先輩も、それを合図にゆっくりと手を放す。
小さく息を吐き、何度も自分の呼吸を確かめた。
胸の動悸が酷くなるたび、胸に手を添えて自分の心に大丈夫と言い聞かせる。
─── どれくらいの時間を掛けて、そこに言葉を綴っていたのかもわからない。
けれど、私の心の内が伝わるように。
私の声が、先輩に届くように。
5年前の、あの日のことが───
先輩に、間違いなく伝わるようにと願いながら、私は言葉を綴り続けた。