1ヶ月半もあった夏休みも瞬く間に過ぎ去り、今日から新学期が始まる。


もうすっかり慣れた時間帯に駅のホームに立てば、つい余計なことを考えてしまう。


頬を撫でる風は、まだ夏の暑さの名残を残していて、私の心をあの夏の夜に連れて行く。


【じゃあまた、夏休み明けに電車で】


あのメッセージを最後に、夏休みの間は一度も先輩から連絡が来ることはなかった。


と、いっても5日程度の話で、夏休み前に比べたら特に不安になるような時間ではない。


それでもそのたった5日が長く感じてしまうのは、先輩との距離が、この夏休みの間に急激に縮んだからなのだろう。


(……急激に、なんて言っても、出掛けたのはお祭りだけだけど)


言いながら、つい自嘲の笑みを零して俯くと、突然自分の足の隣に見慣れた靴が並んだ。