……ほら。

蓮司の後方、私達のやり取りを好奇の目で見ていた蓮司の友達らしき人達が、蓮司の言葉に興味の行方を変えた。



─── え、あの子、声が出ないの。

─── なんで声が出ないの?

─── 見た目、普通なのにね。

─── 声が出ないなんて、可哀想。



本人たちはヒソヒソと、私には聞こえない声で話しているつもりだろう。


けれど言葉は、自分の思う距離より遠くまで届くものなんだ。


そして、無意識に振り回されたそのナイフほど、深く、人の心に突き刺さるものはない。


いつだって傷付けられるのは、簡単だった。


こうやって、知らず知らずの内に突きつけられたナイフに、私は今日まで何度も傷つけられてきた。


……だけどね、蓮司。

心に出来た、たった一つの傷を治すのには、どれだけの努力と時間が必要か、今の蓮司にはわからないでしょう?