「いいからっ、来いっ!!」
「……っ、」
その衝撃で離してしまったカップが、勢い良く地面へと叩きつけられた。
先輩の手を掴んでいた手が、必然的に離される。
腕を引かれ、よろけた拍子に下駄を履いていた素足に冷たさが滲んで視線を落とせば、先程まで甘く色付いていたかき氷は、無残にも足元に散らばって大きな染みを作っていた。
「だから言ったじゃねぇか、こんな奴と関わるのやめろって!お前のこと無責任に、こんなとこ連れてきて……どんなに危ないか、わかってねぇ!!栞のことなんか、少しも考えてねぇんだよ!!」
「……、」
「いいか!?お前の事を少しでも大切に思ってんなら、声の出ないお前をこんなとこに連れてこねぇよ!!お前も、声が出ないくせに、呑気にこんなとこになんて来るなよ!!」
─── その言葉は、今の私にとってはまるで、鋭いナイフのようだった。
一つ一つが私の心を切り裂いて、今日まで少しずつ育んできたきた勇気も、決意も、全てをボロボロにする。
そして、凶器となった言葉は次の傷をつける為に、今度は別の牙を剥く。