* * *
「ん、やっぱり栞に食べさせてもらった方が、甘い」
……本当に、どうにかなってしまうんじゃないかと自分でも不安になる。
樹生先輩に誘導……誘惑されるがまま、先輩の口にかき氷を運んで、「良く出来ました」と微笑む先輩の全てに見惚れた。
先輩から与えられた甘い熱で、私もこのかき氷みたいに、溶けてしまうんじゃないかな。
先輩のことが好きで、大好きで、幸せ過ぎて。
このまま時間が止まってくれたらいいのになんて、子供みたいなことを本気で考えた。
「次は、どこに行く?他にも食べたいものとか欲しいものとかある?」
だけど、先輩のその言葉に返事を返そうとした瞬間。
「……栞?」
「……っ、」
甘い甘いその熱は、夏の夜の闇の中に、驚くほど儚く紛れ、消えてしまった。