「……っ、」
と、そんな光景を蔑んで見ていた俺は、不意に引かれた腕に我に返った。
隣を見れば、俺を見上げて無邪気に目を輝かせる栞がいて。
「(りんご飴、食べたいです!)」
「うん?」
「(り、ん、ご、あ、め)」
パクパクと口を動かし、屋台の先を指差しながら笑顔を見せる栞に、ささくれ立った心が解けていく。
「……了解、りんご飴ね。っていうか、栞が行きたいとこ、全部行こ?」
俺の言葉に花が咲いたような笑顔を見せ、大袈裟なほど元気に頷いた栞。
その表情と仕草に、自分もまた、先程まで客観的に見ていた灯りの中の多くの人達と同じ表情になっているなんて、打算的な俺は知る由もなかった。