突然の言葉に弾けるように顔を上げれば、そこには柔らかな笑みを浮かべて私を見つめる樹生先輩がいた。
「……浴衣、似合ってる」
─── 二重なのに切れ長で、バランスの取れた目元に、吸い込まれるような黒い瞳。
通った鼻筋に、形の良い薄い唇、シャープな輪郭に、シミ一つない肌。
色気たっぷりな、艶のある甘い声。
黒いロングTシャツの袖は肘下辺りまで捲くり上げられ、ブイネック部分からは鎖骨が覗く。
淡い色の細めのジーンズに、紺と白のデザインのデッキシューズ。
本当に本当にシンプルな服装なのに、その全てが先輩のスタイルの良さと端正な顔立ちを最大限に引き立てている。