「……、」
「(というか、お祭りに限らず、人混みとか嫌いそうです……)」
図星。
図星過ぎて、つい何も言えなくなって口を噤んでしまった。
そんな俺に、再び慌てたように携帯へと視線を落した栞が言葉を打ち、俺へと向ける。
「(だ、だからですね……!先輩が嫌いなところへ行っても、つまらなそうにしている先輩を見るのは悲しくなりますし、私もお祭りに行ける立場じゃないので……!)」
「……浴衣、着てくれるんなら、つまらなくも嫌でもないけど」
「(え?)」
「栞が浴衣を着て来てくれるんなら、夏祭りでも人混みでも大歓迎、ってこと」
「……っ、」
言いながら意地悪く笑い、図星を突かれた仕返しとばかりに、白く柔らかな頬へと手を滑らせた。
「栞の浴衣姿……絶対、可愛いだろうし?」
囁くようにそう言って、もうそれ以上の抵抗はさせない為に、栞の唇を人差し指で塞ぐ。
すると、そんな俺の一連の動作に固まっていた栞は、ボッ!と音でも出そうなくらいに顔を赤く染め、再び眉を八の字に下げた。