「……樹生、」
程なくして現れた父は白衣を身に纏い、突然現れた息子の姿に驚いた様子だった。
それはそうだ。あんなに頑なに自分を拒絶していた息子が、突然職場に現れたのだから。
けれど、そんな風に父が狼狽えたのも一瞬。
すぐに平静を取り戻すと、“当直室”と札のついた部屋へと俺を通して、自分は黒皮の椅子へと静かに腰を降ろした。
「座りなさい」
言葉に次いで、視線で促された二人がけ程の大きさのソファーへと腰を降ろす。
そんな俺の動作の全てを視線で追っていた父へと目を向ければ、必然的に視線と視線が交差した。