「……ちゃんと、向き合ってきたよ」
もう何度も見たはずの、凄艶(せいえん)な先輩の立ち姿に唇が震える。
元々声なんて出ないのに、喉の奥が痛んで、まるで言葉が押し潰されたような感覚に陥った。
「父親と向き合って、話してきた」
「(……せん、ぱい)」
「情けないくらいに怖くて、不安で。だけど……栞の言葉があったから、逃げずに向き合えた」
「(樹生、先輩……っ)」
「栞には、全部終わってから報告に来たかったんだ。だから、遅くなったけど……」
「……っ、」
「……ありがとう、栞」
先輩の言葉と笑顔に、涙が堰を切ったように溢れだした。