「俺を引き取った父親に反抗して、何もかもを拒絶して。早く一人前になりたい、早く両親から自立したいって……あの部屋に一人でいると、毎日そんなことばかりを考えてた」



先輩の、孤独。

人が羨む全てを持ち合わせているように見えた先輩は、皆が当たり前に持ち合わせている愛情を、いつだって求めて、願って、苦しんでいた。


諦めた、なんて嘘。

諦めきれないから、いつだって先輩は孤独だったんだ。



「それでも、どんなに足掻いたって現実から逃げたままじゃ抜け出せないこともわかってた。わかってたのに見て見ないふりをして、本当の自分を隠して、必死に自分に言い聞かせてたんだ。
─── いつか、自分を苦しめる全てから開放される日が、きっと来る……って」



言葉と同時、花から蝶が飛び立つように離れた掌。


それに慌てて視線を泳がせれば、私の影の先。


そこに何度も会いたいと願った、先輩の姿があった。