(……いない、よね)
今日もその事実に落胆し、本に手を伸ばしたまま視線を落とすと、本棚と本棚の間で足を止めた。
……会いたい。
ただ、一目、樹生先輩の顔を見るだけでいいから。
一瞬、すれ違うだけでいい。……ううん、一瞬だけ、遠くに先輩を見付けるだけでいいから。
それ以上の贅沢はもう願わないから、もう一度だけ、せめてもう一度だけ先輩に会わせてほしい。
たった一度、先輩の顔を見ることが出来たのなら、もう二度と先輩に関わらないと誓うから、だから───
「……やっと、会えた」
「……っ、」
「遅くなって、ごめん」