【相馬 樹生】
「俺の、名前……?」
「(初めに、これだけは言わせてください。私は、先輩のご両親の肩を持つつもりはありません。どんな理由があれ、先輩のこと、こんな風に苦しめて……許せません。申し訳ないけど、とても腹が立ってます)」
「……、」
「(でも、先輩の名前。“樹生(いつき)”という先輩の名前は、そんなご両親がつけてくださった名前ですよね?)」
「……そう、だけど」
「(森林の中に凛と佇む“樹”のように、静かに強く、逞しく“生”きてほしい。“樹生”という名前は、きっと、そういう意味のこもった名前なんだろうな……って、私、先輩の名前を初めて見た時に、思いました)」
「……っ、」
「(とても。とても素敵な名前で─── 先輩に似合う名前だと、思いました)」
人の名前には、それを付けたその人が想う、“愛”が篭っていると、私は思う。
生まれてきたその子がこの世界を生きていくために、自分の家族がくれた“名前”。
私の“栞”という名前にも、ちゃんとした意味がある。
それは昔に─── 父が教えてくれた、大切な宝物。