キス。……キス?


先輩にキスされるか、なんて─── そんなこと、考える余裕もなかった。


それ程までに唐突で、全て予想外の出来事だったから。



「……栞は、俺のこと買い被りすぎなんだよ」


「……っ、」


「俺は、こんな風に女の子のこと簡単に押し倒せるし、今のだって相手が栞じゃなきゃなんの躊躇もなくしてた」


「(私じゃ、なかったら……?)」


「栞はさ、キスだってしたことない、そんな女の子だろ?……俺、こういうことに慣れてない相手とは……絶対に、しないから」


「……っ、」


「俺の良いところを、たくさん知ってる?それは俺が、汚くてズルイ自分を上手く隠していたから言える言葉だ。偽りの俺しか見てないから、言える言葉」