「(……え?)」



ぐっ、と。押された身体。


私の肩を押したのはもちろん樹生先輩で、突然のそれになんの準備もしていなかった私はそのまま床へと押し倒された。


訳もわからぬままに宙を見上げれば、視線の先には私に覆い被さるようにした先輩がいる。


長い睫毛、まるで芸術品のような先輩の綺麗な顔を認識した瞬間、ゆっくりと。


ゆっくりと、先輩の唇が私に近付いてきて───



「……キス、されると思った?」


「……っ、」



あと、ほんの数センチ。


呼吸もぶつかる距離で動きを止めた先輩が、そう言って残酷な程綺麗な嘲笑を浮かべた。