【……大丈夫です】


「……っ、」


【大丈夫です、先輩】


「……な、にして?」


【先輩は今、一人じゃありません】


「……っ、」



……自分でも。

どうしてそんなことを言ったのか、わからない。


気が付けば私は自然とペンを手に持って、先輩の前に開かれたノートへと、そんな言葉を綴っていた。



【先輩は、優しい人です。出会ってからの時間はまだ短いけれど、私は先輩の良いところ、素敵なところ。たくさんたくさん知ってます。だから、少しくらいワガママな先輩や、嫌なところを見せられたって今更嫌いになんてなりません。だから、大丈夫です】



それだけ書いてペンを置くと、再び固く握られた先輩の手に自分の手を重ねた。


そうすれば、ゆっくりとその手から力が抜ける。


それにほんの少しだけどホッとして、思わず笑みを零して先輩を見つめた。



(ああ、これで。もしかしたら、少しでも先輩が落ち着いてくれたかもしれない)



……だけど、私は。

私は、少しもわかっていなかった。


先輩の心の傷。先輩の思い。先輩が抱える……途方もない寂しさ。