「あ……俺……、今……」



弱々しく呟いて。

私を見つめる先輩の目はまるで、道に迷った子供のようだった。


樹生先輩……何が、あったんですか?


今の電話で、お父さんに何か言われたんですか?


そんな風に先輩が傷付く、何かを言われたんですか?


先輩は今、何に怯えているの?



「……っ、」



心の中で思うことを先輩に尋ねていいのかわからなかった。


私を見つめる先輩の瞳が困惑に変わって、一瞬宙をさ迷い再び下へ逸らされる。


だけど、未だに拳は固く握られたままで、その力が解けることはない。


それさえも先輩は気付いていないのか、ただただ視線を落として眉根を寄せ、それ以上何かを語る様子はなくて。