(“……お父さん?”)
ピクリ、先輩の言葉に思わず身体が強ばった。
それと同時に痛いくらいに胸が締め付けられる。
お父さん……お父さん、って。電話相手は、先輩のお父さんなの?
「……じゃあ、それだけならもう切るから」
温度のない声でそう言うと電話を切り、携帯電話を無造作に机の上に置いた先輩。
その表情はつい先程まで見せてくれていたものとは全く違う、苛立ちを含んだもので。
それが図書館で見た、どこか思い詰めたようなそれと重なって、胸が不穏に高鳴った。
─── それというのも、“お父さん”。
その言葉がグルグルと、追い討ちをかけるように私の胸の中を掻き乱すから……
「─── 早く、大人になりたい」
「……っ、」
「誰の力も借りない。一人で生きていける力が欲しい……」
……先輩?