……先輩?
今の、樹生先輩の声?
「……いつの間にか、番号変えたの?……ああ、仕事用か。まぁ別に、緊急の連絡取るなら病院にかければいいんだし、正直どっちの番号も知らなくていいんだけど」
〈――――― ついさっき――― 連絡――― から来て―――― んで、――ったんだ〉
「……別に、言いたくなかったわけじゃない。ただ……連絡するの、忘れてただけだから」
部屋が静か過ぎるせいなのか、電話口からは相手の声であろう男の人のものが途切れ途切れに漏れ聞こえる。
だけど、それに答える樹生先輩の声が。
先輩の声が、今日まで一度も聞いたことのない、相手を拒絶するような冷たさを持っていたから……
「─── とにかく。あんたがいないと担任は納得しないらしいから。指定された日にちに指定された場所に来てくれるだけでいい。それ以上、何もかも望まないから安心してよ─── オトーサン」