「─── っ、」



と。

そんな風に私が自分の欲求と理性を戦わせていれば、不意に響いた振動。


それにお互い動きを止めて視線を這わせると、その振動の正体は机の上に置かれている先輩の携帯電話だった。



「……ごめん。ちょっと、出てもいい?」


「(あ……、はい、もちろんです……!!)」



謝る理由なんか一つもないのに、先輩は再び「ごめん」と口にして携帯電話を耳に当てがった。


─── 瞬間。



「……何か用?」

「……っ、」



今まで聞いたこともない。


酷く温度のない声が、静寂に包まれた部屋に重く、響いた。