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「─── そうそう、ここはさっき教えた公式を使うと簡単に解けるよ。ちなみに、こっちも。この公式を一つ覚えれば、色んな問題に応用できるから」
先輩の綺麗な指が、見惚れるほどスムーズに問題を解く為の道を示してくれる。
先輩の説明はどれもわかりやすくて、丁寧で。
ここを押さえておけば、というところを端的かつ的確に伝えてくれた。
(それなら……ここも、これと同じ方法で……答え、あってるかな……)
「あ、そうそう。正解。大分慣れてきたんじゃない?」
ふわり、と。先輩が優しく笑ってくれる。
一問解く毎に、こうして先輩が甘い笑みをくれるから、これ以上のご褒美ってない。
樹生先輩の笑顔がご褒美なんて、本当に贅沢だ。
贅沢過ぎて……ブラウス、もう少し乾かずにいたらいいのに、なんて思ったり……って。
ああ、もう……!だから、ダメなんだってば……!
先輩は受験生だから、忙しいのに……っ!!