「(私のことはいいので、先輩は勉強してください!!私は……その間、あの、適当に……色々してますんで)」


「……ありがとう。それなら、栞の勉強を見る、っていうのはどう?」


「(……え?)」


「ほら、勉強ってさ。ただひたすらノートに文字を書き写すより、誰かに教えたりした方が自分の勉強にもなって、記憶に残ったりするんだよ」



こくり、カップを持ち上げ、一口だけココアを飲んだ先輩が優しく笑う。



「(……そうなん、ですか?)」


「うん。だから俺、教えるのとか案外得意でさ。学校でもテスト前にはタマ─── あ、友達に教えたり。2年生の復習にもなるし、栞さえ迷惑じゃなきゃ、今日だけ“臨時家庭教師”するけど、どう?」


「……っ、」



そう言って、今度はどこか挑発的に笑った先輩。


先輩のその表情と、“臨時家庭教師”という言葉についつい反応してしまう私は、多分先程の髪を拭いてくれたことから─── 余計なことを、意識してしまってる。



(……ダメ、ダメダメ。変な妄想禁止っ!!先輩は親切で家庭教師をしてくれるって言ってるんだから。私だけ、浮かれてちゃダメ!!)



キッ、と。一瞬だけ力強く唇を引き結び、再び先輩へと視線を向ける。