(……あれは、反則だ) 輪郭をなぞるように張り付いた、濡れた髪。 自分だけに真っ直ぐ向けられる目と、綺麗な瞳、桜色の唇。 何も知らない。純粋という言葉を姿に表したような、幼さの残る女の子。 ─── かと思えば、突然頬を赤く染め、恥じらうように俺から目を逸らした。 無自覚なのか、潤んだ瞳。 俺に髪を拭かれながら、戸惑う栞が何を思っているのか。 それが手に取るようにわかって……俺の心を、性急に揺らした。