(こ、こんなの……心臓、持たないよ……っ)
「んー……、ちょっとはマシになったかな?」
(……と、いうか、今更だけど私今、先輩の家にいるんだよね……?)
─── ふたり、きりで。
(そ、それって、実はすごいことなんじゃ……)
ふたりきり。
ハプニングとはいえ、先輩と、先輩の家に二人きりでいるなんて。
本当に今更だけど、それを自覚してしまえば、ダメだと思ってもつい意識してしまい、先輩の顔を真っ直ぐに見れない。
「……栞?ドライヤー貸すから、あとはそれで髪、乾かして?」
「……っ、」
「この家のバスルームは浴室乾燥機がついてるから、制服のブラウスはそれにかけて。で、その間はとりあえず俺のパーカーでも着てて」
「(……先輩?)」
「脱衣所にパーカー置いてあるから。わかったら、今すぐ行動。俺はホットココア作っておきます。早くしないと栞の分も飲んじゃうよ?」
「……っ、」
そうして、言葉と同時に離された手。
先輩は捲し立てるようにそれだけ言うと、そのままキッチンへと入っていってしまった。