先輩から渡されたタオルを受け取り、濡れてしまった髪、身体、制服、鞄と順に拭いていく。
(……ソックスは、とりあえず脱いだ方がいいよね、床、濡れちゃうもんね。あ、でも素足だと逆に失礼かな?でもでも、夏になればみんな素足でサンダルだし、大丈夫かな……)
と。そんな風に悩んでいる私を見た先輩が、ゆっくりと口を開いた。
「……本当なら、今すぐお風呂入って身体を温めて、って言いたいとこだけど、」
「(……え、)」
「栞は何も警戒しなさそうだし、止めといた方がいいかな」
「(先輩……?)」
「女の子の湯上がりとか、男には結構辛いから。特に……二人きりの状況なのに、なんの警戒心も持たない女の子が相手だと」
それだけ言うと、ふっ、と優しく微笑んだ樹生先輩。
「タオル、貸して。まだ……髪が濡れてるよ」
近づいた身体に一瞬胸を高鳴らせれば、そこには今まで見たことのない。
酷く大人な表情をした先輩が、私を真っ直ぐに見下ろしていた。