「……これ、しばらくどころか夜まで止まないかもね」
「(……はい、)」
どうしよう。
もう全てを諦めて、ずぶ濡れで帰るしか方法はないのかもしれない。
だとしても、樹生先輩はどうするんだろう。
そういえば、先輩の家ってどの辺りなんだろう。
図書館からそう遠くないって言ってたし、それなら先輩は問題なく家に帰れるのかな?
「……んー、とりあえず」
「(……え?)」
「ここでこのまま雨宿りしてるわけにもいかないし、すぐそこにある俺の家に、傘を取りにいくのが賢い選択かな?」
「(……え?い、家?)」
「……よし。そうと決まれば、とりあえず、走ろう」
「……っ、(え、ええっ!?)」
「ごめん、ちょっとだけ我慢してくれる?」
そうして、返事をする間もなく再び引かれた腕。
それに抗うことも出来ずに、私はすぐそこにあるという先輩の家へ向かって、雨の中を走った。