“自分が相手のことを、それだけ信頼してるって証拠”
先輩のその言葉に、私は蓮司との今までを思い浮かべた。
─── 小さい頃から、いつも一緒にいた幼馴染の蓮司。
蓮司は昔から曲がったことが大嫌いで、荒っぽいところはあるけどいつだって優しくて。
楽しいことがあれば2人で喜んで、私が間違っていたら怒ってくれて……それでも、どんな時も、私の味方でいてくれた。
だから。
そんな蓮司だからこそ、私は許せなかったんだ。
真実だという確証もなく、噂だけを信じて、先輩のことを悪く言う蓮司のこと。
蓮司は、そんなこと絶対にしないって、そう信じていたから。
何より、“ あの日 ”のことを知っている蓮司だからこそ私は、ついあんな風に、むきになって───
「だからさ、その子も栞が言いたかったこと、ちゃんとわかってくれてるよ」
「(……せん、ぱい)」
「そんな顔しなくても、大丈夫。すぐ、仲直りできるから」
ポン、と。その言葉と同時、優しく髪に乗せられた手。
その手の温かさに、一瞬脳裏を過ぎった“あの日”を振り払うかのように、私は深く頷いた。