「喧嘩するなんて、栞でも怒ることあるんだね?」
綺麗に目を細め、そんなことを言う先輩。
そんな先輩の言葉や表情の変化に一々反応してしまう私の心臓は、先輩に出会ってから絶対にどこかおかしくなってしまったんだ。
「(……人間ですから。怒ること、たくさんありますよ)」
「ふはっ、そうなんだ。だとしたら、俺も栞のこと怒らせないように気を付けなきゃ」
「(先輩に怒ることなんかないですよ……。先輩、私が怒る前に先回りして全部解決しちゃいそうですしっ)」
「えー……何、その高評価。俺、そんな特殊能力ないんだけどなー。……でも、まぁ、大丈夫だよ」
「(……え、)」
「だって、その幼馴染みの子は、栞が遠慮なくぶつかっていける相手ってことでしょ?」
「……、」
「そういう相手って、中々いない。だけどそれは、相手が自分の感情を受け止めてくれるからこそで、逆に考えれば自分が相手のことを、それだけ信頼してるって証拠だから」