遊野煌さんの作品一覧

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ーーーー今年もまた夏がやってくる。 俺が今だに思い出すあの夏が。 見上げた日差しが、容赦なく俺を照らし、俺の頬の傷が、焼けたように痛むのは気のせいか。 近くの公園からは、競うように蝉の叫び声が聞こえてくる。やかましく泣き叫び、命の限り、声を張り上げるセミは、どこか俺と似ている。 俺の胸に、灼熱のように燃え上がる炎は、もはや手がつけられないほどの憎悪の塊となり、この身をいくら引き裂いても消えはしない。悶え苦しみながら、血反吐を吐き、這いつくばりながら、俺は命の限り、あの日の想いを抱き抱えながら生きていく。 ーーーー蛍のために。
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