どーんどーんと銅鑼(どら)の音が鳴る中、今日はそこに百人の女が集められていた。国中から選抜された、皇帝の妃たちである。
 到着してすぐに身元の確認と宦官による身体検査が行われた。その後、後宮に入る前に百人の妃の順位が言い渡されるという。凛風は他の九十九人の妃とともにその時を待っていた。
「あー、胸が鳴って痛いわ。二十以内に入らなければ、望みはないわよね」
 隣に座る妃が、向こう隣の妃に話しかけている。
「あら、でも先の皇帝陛下は、後宮女官との間にもお子ができたじゃない。あまり数は関係ないのかも」
「でも、皇太后さまは、一のお妃さまじゃない? やっぱり(たまわ)る数が後だと、お顔を拝見する機会も少ないんじゃないかしら? 五十より下なら陛下の目に留まるなんて、目をつぶって針に糸を通すより難しいってお父さまから言われたわ」
 後宮に入る妃は、百人と決められていて、一から順番に数を賜るという。
 皇帝は気に入る娘が見つかるまでは、一の妃から順番に閨に呼び、寵愛する娘を選ぶのだ。
 当然ながら、有力家臣の娘や見目麗しい娘から、若い数を賜ると言われていて、先ほど受けた身体検査の結果も加味される。
 皆がなるべく若い数をと願う中、凛風だけは、真逆のことを考えていた。賜る数が若ければ、それだけ計画を実行する時が早まるからだ。
 父は下級貴族で、自分は特別美しいわけではない。本来ならば、若い数を賜ることはなさそうだけれど……。
 そう願う凛風の頭に、今朝までの出来事が浮かんだ。