ぬるくなってしまったカクテルを干して、そうだ奔放ついでに、と思いついた。

先輩、と呼びかけると、私から受けとったビンをゴミ箱に捨てながら、ん? と返事してくれる。



「ほっぺた以外の選択肢も、ありました?」



先輩が目を丸くして振り返った。

何度かまばたきをして、まあ…と曖昧な答えをくれる。



「ください、誕生日プレゼントに」



歩み寄って見あげると、その瞳が困惑に揺れた。

ダメで元々なりに、勝算はあった。

先輩は、出かたを探るような発言からは、するりと上手に逃げるわりに、直球でお願いされると、断れない。

今もやっぱり言葉に詰まって、きっと、どう私を傷つけずに乗りきるか、考えてる。



「酔っ払ってるね?」

「だとしたら、なんですか?」



夏休み前のお相手と、終わったっていう噂も聞いてます。

私が遠慮する理由は、ないんです。

そもそも私がこのくらいの量じゃ酔わないことくらい、知ってるくせに。

強気に出てみると、先輩の心が折れたのがわかった。

ひとつため息をついて、じろっと私を見おろす。



「どんなのがいいの」



え? と今度は私が困惑する番だった。

どんなのって…そんなに種類があるの?


うろたえる私を見て、再び優位に立ったことに気がついたのか、先輩がにやっと笑う。

ちょっとムッとしつつ、仕方なく、わかる範囲で答えた。



「…先輩が、いつもしてるようなのを」

「本気?」



倒れちゃうよ、と小バカにするように、楽しげに鼻で笑われて、かっと顔が熱くなる。

いったい何をする気ですか。

普段、どんなことをしてるんですか。


なんだか予想と違う感じになってきたので、もういいですと言おうと思った瞬間、先輩の肩に激しく顔を打った。

いきなり抱き寄せられたからだ。

肺に残っていた空気が、一瞬で出きってしまうくらいの勢いだった。