平気です、と綺麗に包帯が巻かれたままの足を上げてみせると、安心したように微笑む。

ついでに言いますとですね、と切り出すと、先輩が優しく首をかしげた。



「その子は、一緒にお酒を飲みたいようです」

「…怪我してるのにアルコールはないでしょ」

「出血はもう、とまってますし」



だからダメなんだよ、と言いつつも、これ以上厳しくすることにためらいがあるのか、難しい顔で少し悩むと。

最終的には、はい、と飲みかけのビンを差し出してくれた。


ウォッカベースの、爽やかなカクテルだ。

ひと口あおると、炭酸とレモンの風味が喉をきゅっと潤してくれる。

意外に喉が渇いていたことに気づき、ごくごく飲むと、空っぽの胃が温まった。

ビンを受けとった先輩が、呑兵衛だね、とあきれ声を出して、空をあおぎながらまた飲む。



「ほんと、すごい月だね」

「星が消えちゃいましたね」



渡されたビンがほぼ空だったので、飲んじゃっていいのかなと目で確認すると、実はもう一本ある、と先輩がポケットを指さした。

妙な準備のよさに大笑いして、遠慮なく飲み干すと、先輩が新しいビンを開ける。


行くあてもなく、ぶらぶらと歩いて。

話すでもなく、一緒にお酒なんか飲んでる。


なんとなくおかしくて、楽しくて、自然と笑ってしまう。

先輩、私ね、18歳児は、今夜で終わりなの。



「まさか、明日誕生日?」

「そうなんです」

「19歳かあ」



あんまり見えないね、と笑う先輩が、優しく尋ねた。





「ご両親と過ごさなくて、いいの?」





先輩の、困惑に見開かれた目を見て。

私は、自分がどんな顔をしてるのか、想像がついた。