確かにこれは、みんなには言えない。

知られたら最後、合宿のたびに押しかけられるだろう。

合宿じゃなくても押しかけられるかも。



「国家機密ですね」

「でしょ、トップシークレットでしょ。だから内緒だよ」



私も指を立てて、ひそひそ声で秘密を誓うと、おかしそうに笑った先輩が、肩に回した腕にぐいと力をこめた。

勢いでよろけた私は、先輩の胸にぶつかるはめになる。

日差しに炙られた肌を頬に感じ、目の前には綺麗な鎖骨と、すっと締まった裸の胸がある。

先輩は、ふざけただけなんだろうに。

しまった、私、固まっちゃった。


とっさに身体を支えた手は、運悪く先輩のウエストのあたりに触れていた。

パーカーを握ればよかったのに。

意識してしまった手前、もう手を置いていられず、でも離すきっかけが見つからない。

戸惑いに一瞬さまよった指先が、温かい肌を引っかいた時。

その下の筋肉が、びくりと震えた。

思わずぱっと身体を離すと、やっぱり、しまったと思っているらしい先輩と目が合った。


うわあ。

自分ひとりで意識してただけならまだしも、先輩もだったとなると、なおさらいたたまれなくなる。

急に自分が水着姿なのが気になりはじめて、パーカーのファスナーをさっと上げた。



「あの、このへんでいいです。向こう行くと、先輩、みんなに会っちゃうでしょう」



できることなら、会わずにしのげたほうがいいでしょう、とファスナーをいじりながら目も合わせずに提案すると。

先輩は少しの間、じっと私を見て。



「ごめんね」



優しく微笑んで、ひとつうなずき、本部のほうへ戻っていった。



“ごめんね”ってどういう意味だろう。

身体が熱い。

恥ずかしい、幼稚で子供な私。

先輩に、変な気を遣わせてしまった。