「B先輩…!」

「あれ」



彼もさすがに驚いたらしく、休みの間に切ったんだろう、少しさっぱりした髪をかきあげて、目を丸くした。



「もしかして、合宿?」

「そうです、先輩は、アルバイトですか?」

「ボランティア。その子、迷子? 預かるよ」



おいで、と先輩がにこっと笑い、少し緊張している様子の男の子の手をとる。



「名前とか記録したいから、一緒に来てもらっていいかな」

「はい」



男の子を真ん中に、並んで歩きながら。

私はこの遭遇にはちきれそうな胸を抱えつつも、現実味がわかなくて、ぼんやりしていた。





男の子のお母さんは、すぐに見つかった。

引き渡しのあと、ちょうど休憩に入るところだったらしい先輩が、ユニフォームを脱いで、いつものパーカーを手に戻ってくる。



「時間とらせて、ごめんね」

「いえ、大丈夫です」

「みんなのとこまで送るよ」



本部のテントを出ながら、今さらどぎまぎした。

黒いひざ丈の水着姿になった先輩は、普段半袖にすらあまりならないせいで見慣れない肌が、むき出しで。

海なんだから当たり前なのに、目のやり場がない。


先輩、焼けた。

もともと色白というほどでもないけど、そう日焼けした印象もなかった先輩が、明らかに半トーンくらい焼けている。

逆に髪は、さらに色が抜けてしまっている。

指摘すると、焼けやすいんだ、と困ったように髪をくしゃくしゃとかき回した。



「小さな子の相手、慣れてますね」

「甥っ子がちょうどあのくらいなんだよね」



そうか、だからあんなに堂に入った相手ぶりだったんだ。

本部に向かう間、先輩はずっと男の子に話しかけていた。

名前は? 誰と来たの? ジュース好き? 何か食べる?

だんだんと男の子の緊張をほぐして、控えめな笑顔を引き出していった優しい声を、微笑ましく思い出す。

パーカーに袖を通しながら、いつまでこっちにいるの? と先輩が尋ねた。