「ひとり暮らしNGの代わりに、車買ってあげる、みたいな家じゃない? うちもそのクチ」
私が乗せてもらった車の持ち主である先輩が、あははと笑った。
コンパクトな赤いワゴンに5人が詰まったこの車は、結果的に女の子専用車両となり、道中は気楽なトーク満載だ。
と言っても、あえての下品なネタも恋愛ぶっちゃけ話もなく、みんなわいわい、サークル内の男の人の噂なんかを無責任に話す。
ふと槇田先輩の話になった時、隣の真衣子と目が合った。
私と真衣子以外は3年生同士なので仲がよく、かっこいいよねーなんて笑いあっている。
「なんで彼女つくらないんだろうね」
「結局ひとりもつくらなかったよね?」
「言ってるだけで、実はいたのかもよ」
「でもそういうのって、絶対わかるじゃん。実際いなかったっぽいよ、やっぱり」
そこがまたいい、なんて声があがると、真衣子は複雑な顔で、窓の外に目をやった。
宿泊施設は、三角屋根で二階建てのロッジが延々つながったような、おしゃれで可愛いつくりだった。
いかにも土地が余ってるんですという風情で、テニスコートも数えきれないくらいあって、よそのサークルも来ている。
もともと高かったテンションがさらに上がった私は、割り当てられた真衣子との二人部屋に入って、歓声をあげた。
「可愛い!」
「ほんとだ、こりゃ可愛いわ」
淡いサーモンピンクの壁に、白木のダブルベッド、カーテンや調度も全部白で、一見すると子供部屋みたい。
あとから確認すると、スチールとモノトーンでまとめられた部屋もあったり、ナチュラルなウッドテイストの部屋もあったりで。
素敵な遊び心に感心させられるばかりの施設だった。
食料をどっさり買い込んで、三食自炊。
朝、日が高くなる前に数時間テニスをして、日中はビーチに行き、少し涼しくなる頃からまたテニス。
OBがちょこちょこ立ち寄って指導してくれたり、差し入れをくれたりしつつ、集中してみっちり練習できるのは、楽しかった。
毎晩宴会騒ぎかと思いきや、真面目なこのサークルは、ナイター設備を使って、夕食後もテニスだ。
中学校時代は全国行ったよ、とか、ジュニアクラブで海外遠征行ったよ、とか、そこそこ本格的な人が集まっているので、自然そうなる。