「じゃあ真衣子も行く?」
「そうする。まあまずは試験だよね。なんでみずほって、そんなにフランス語余裕なの?」
「高校の時、授業があったの」
「フランス語の?」
そう、とうなずくと、さすがお嬢様校、と真衣子が目を見開いた。
「裏切らないでしょ」
「裏切らないね」
笑っていると先生がやって来て、私たちは真面目に、講義に参加する態勢を整えた。
大学の夏休みの長さに驚いた。
だって兄は、そんなにゆっくりしていた様子はなかった。
夏休みも春休みも丸二ヶ月あるなんて。
これはアルバイトでもしないと、時間がもったいない。
休みなんて、そんなにいらないのに。
学校がなかったら、B先輩に会えない。
7月末の試験が終わったら、次会える可能性があるのは、10月ってこと?
季節が変わっちゃうじゃないか。
そんなに会えなくて、耐えられるかなと思う間にも無情に時は過ぎ。
大学に入って初めての試験を終え、夏休みを迎え。
神様は意外と気まぐれだったことを実感する。
「うわあ、綺麗!」
「天然の海岸なんて、東京じゃ見ないんじゃない?」
そうですねー、と少し開けた窓から入る風を浴びながら、きらきら光る白い砂浜をうっとりと眺めた。
学校所有の合宿所は、大学から県内をずっと南下した、海辺の町にあった。
何人かの先輩が車を出し、それぞれ分乗しての旅だ。
大学に入ってびっくりしたことのひとつに、車通学が許されているというのがある。
許されているというか、かなり当たり前。
大きな学生用駐車場があって、新車も外車もとまってる。