もはや遠慮する理由が見つからなくて、恥ずかしさに泣きそうになりながらも、またそれを口に入れてもらった。

先輩が食べて、私にも食べさせてくれる。

それを数回くり返すと、ようやくカップが空になった。


ほっとする私に気づく様子もなく、先輩がポケットから煙草をとり出して、一本をくわえ。

その時、ちょっと気にするように口元を押さえた。



「痛そうですね…」



無意識だったらしく、私の言葉に、え、と目を見開く。

あざを指さすと、ああ、と気まずそうに微笑んで、目立つ? と訊いてきた。



「少しだけ」

「そっかー」



風からかばうように両手で覆って、煙草に火をつける。

男の人らしくて、見るたびどきっとする仕草。


口の端に煙草をぶらさげたまま、ふうっと煙を吐いた先輩を見て、あれっと気がついた。

ほんの少し、元気がないように見える。



「先輩…大丈夫ですか?」

「え?」



何が? ときょとんとされた。

あんまり自覚、ないみたい。



「ちょっと、落ちこんでる、みたいなので…」

「ほんと?」



若干恥ずかしそうな表情になった先輩は、手に持ったカップをくるくる回しながら、しばらく黙って。

空き缶に灰を落とすと、煙草を指に挟んで、かすかなため息をついた。



「探してた相手が、見つかったと思ったんだけど、違って」

「えっ?」



予想と違う話が返ってきて、戸惑った。

私はてっきり、顔のあざにまつわる一件が原因なのかと思ったんだけど。