「渋いね」
「ジュースが入ってる感じのだと、頭痛くなっちゃうの」
同じ理由で、ミルク系もあまり得意じゃないことが最近わかった。
意外、と笑う加治くんが、店員さんを呼んでくれる。
「ワインとか焼酎とか、ハマったらいけそうだね」
「試したことない」
「今度、もっとお酒の種類の多い店、行こうよ。いろいろ飲んでみたくない?」
うん、とはとっさに言えず、私は曖昧に笑みを浮かべると、テーブルの上のおつまみに逃げた。
最低だ、私。
マナー違反だ、こんなの。
社交辞令でも、うんと言うべき場面だったのに。
どこからか現れた店員さんにオーダーを伝えると、加治くんは私に向き直って、にこりと微笑んだ。
「俺は、あのBって先輩に勝たないといけないのかな」
顔が真っ赤にほてるのがわかった。
私、そんなそぶり、見せてた?
うつむく私を、加治くんが笑ったのがわかる。
「かっこいいよね、あの人。我が道を行ってる感じで」
「そう思う?」
変な奴、と誰もがからかうB先輩だけど、こんなふうに言う人もいるんだと安心すると、加治くんが明るくうなずいた。
「みんなそういじってるだけで、やっぱ憧れてると思うよ、ああいう流されない人」
「それに優しいよね」
「まあ、俺は別に、優しくされたことないけど」
思わず意気込んだら、くすくすと笑われてしまった。
恥ずかしさに小さくなる。
でもさ、と加治くんが静かに言った。
「みずほちゃんには、合わないよ」
「合わない…?」
「本当に優しいなら、あんなに女の人とっかえひっかえすると思う?」