中高とテニス部だった私は、たまにプレーする機会があればと、テニスサークルに入ろうと思った。
『テニサーは、飲みサークルの代名詞だから、気をつけて』
学生ホールで、テニスサークルの掲示板を見ていた私に、そう声をかけてくれたのが、水越真衣子(みずこしまいこ)だった。
『そうなの?』
『ヘタなの選ぶと、テニスなんて永遠にできないよ。あたしもやりたいから、一緒にちゃんとしたとこ探そ』
すらりと背が高く、綺麗な黒髪がきりっとした顔立ちにぴったりの真衣子は、第二外国語で同じクラスだったことを、翌日知った。
『聞いてきたよ、いくつかよさそうなところあるわ』
『もう知り合いがいるの? すごいね』
『付属校上がりの奴を探したの。つるんでばっかでうるさいあいつら、こういう時に使わない手はないでしょ』
なるほど。
この大学は、1割近くが付属校からの実質エスカレーター組だ。
すでに先輩とのつながりが学内にある彼らは、単位をとりやすい講義やOBが経営している飲み屋などにすごく詳しいらしい。
そんなところに目をつけることすら思いつかなかった私は、尊敬のまなざしを送った。
真衣子の見つけてくれた候補のサークルに、日替わりで仮登録をして、そうするとまず確実に、歓迎会と称した飲み会が開かれる。
そうやっていくつものサークルをはしごして、連日こうして飲み歩くはめになっているのだった。
「みずほちゃんて、なんでこの大学来たの?」
「ひとり暮らしがしたかったんです」
「ここまで地方に来なくたって、できるでしょ」
かなり規模の大きいらしいこのサークルでは、そのうち20名ほどが集まって歓迎会をしてくれた。
学内にあるバーベキュー施設を使って、周囲にわんさか咲いている終わりかけの桜を眺めながら、次々と缶のお酒を消費していく。
新入生は私と真衣子を含め5人程度で、私は男女の先輩数名に囲まれて、いかにも初対面な会話をくり広げていた。
知ってます? と私が出身校の名前を挙げると、先輩たちが首をひねった。
「…この学校名が通じない場所に来たかったんです」
「泣く子も黙る進学校とか?」
「いえ、いわゆるお嬢様校です。幼稚舎からエスカレーターの」
『テニサーは、飲みサークルの代名詞だから、気をつけて』
学生ホールで、テニスサークルの掲示板を見ていた私に、そう声をかけてくれたのが、水越真衣子(みずこしまいこ)だった。
『そうなの?』
『ヘタなの選ぶと、テニスなんて永遠にできないよ。あたしもやりたいから、一緒にちゃんとしたとこ探そ』
すらりと背が高く、綺麗な黒髪がきりっとした顔立ちにぴったりの真衣子は、第二外国語で同じクラスだったことを、翌日知った。
『聞いてきたよ、いくつかよさそうなところあるわ』
『もう知り合いがいるの? すごいね』
『付属校上がりの奴を探したの。つるんでばっかでうるさいあいつら、こういう時に使わない手はないでしょ』
なるほど。
この大学は、1割近くが付属校からの実質エスカレーター組だ。
すでに先輩とのつながりが学内にある彼らは、単位をとりやすい講義やOBが経営している飲み屋などにすごく詳しいらしい。
そんなところに目をつけることすら思いつかなかった私は、尊敬のまなざしを送った。
真衣子の見つけてくれた候補のサークルに、日替わりで仮登録をして、そうするとまず確実に、歓迎会と称した飲み会が開かれる。
そうやっていくつものサークルをはしごして、連日こうして飲み歩くはめになっているのだった。
「みずほちゃんて、なんでこの大学来たの?」
「ひとり暮らしがしたかったんです」
「ここまで地方に来なくたって、できるでしょ」
かなり規模の大きいらしいこのサークルでは、そのうち20名ほどが集まって歓迎会をしてくれた。
学内にあるバーベキュー施設を使って、周囲にわんさか咲いている終わりかけの桜を眺めながら、次々と缶のお酒を消費していく。
新入生は私と真衣子を含め5人程度で、私は男女の先輩数名に囲まれて、いかにも初対面な会話をくり広げていた。
知ってます? と私が出身校の名前を挙げると、先輩たちが首をひねった。
「…この学校名が通じない場所に来たかったんです」
「泣く子も黙る進学校とか?」
「いえ、いわゆるお嬢様校です。幼稚舎からエスカレーターの」