「ウィッチだ」
「私のこと? 褒め言葉だわ、ありがとう」
愛情のこもったハグを受けて、Bもその豊かな身体を抱きしめ返す。
「ねえ、そんなすご腕の魔女なら、おまじないとかもできたりしないの」
「どんな?」
「…物事が、全部うまくいくような」
Bには正体のわからない、何か甘くてスモーキーな香りの中で、喉を鳴らして彼女が笑う。
「そんな都合のいいものがあったら、戦争なんて起こらなかったでしょうよ」
「だよね」
「何か心配ごとがあるの?」
言葉に詰まったBを、亭主が見あげた。
Bは曖昧に笑うことしかできず、紫と緑の瞳が心配そうに細められる。
「ジャッジされに行くだけだよ」
「不安なの?」
「全然、わからない、長いこと会ってなかったんだ」
「でも会いたいのね」
突然、何かの感情がBを襲った。
それは心臓を引き絞り、刺すように痛めつけて、優しく離れていく。
――会いたい
どんな結果に終わってもいいから、もう一度会いたい。
なあんだ。
そうだったのか、とひとりで反省した。
つまり、会いたかったのだ。
もうずっとBは、あの子に会いたかった。
そんなの、謝罪をして楽になりたいだけだ、と冷たくとらえる自分もいる。
けれど、たとえ謝ることを許されなかったとしても。
あの夢見ているようで力強く、向こう見ずで愛らしい存在を、もう一度確認できれば、十分だと思った。