「来たな」
「電車もとまるねー。明日学校、どうしよ」
「えっ」
ぎょっとした私を、ふたりが驚いて見つめた。
「とまるんですか、このくらいの雨で?」
「たぶんもう、とまってるよ」
「もうとまってる!?」
じゃあ私、どうやって帰るの?
思わず悲鳴をあげると、家、この駅なんじゃないの? と先輩がきょとんとした。
「隣の駅なんです」
「この路線、このあたり以外は勾配がきついんだよ。大雨が降るとすぐ線路が水没しちゃうから、早めにとめるんだ」
「全然知りませんでした…」
「そうか、そりゃそうだよね」
教えてあげればよかったね、と申し訳なさそうに言われて、とんでもないです、と首を振る。
「私が無知でした」
「でもそもそも、もう終電の時間だったんだよ。もしかしてそれも知らなかった?」
「終電!?」
だってまだ…と言おうとして、今が何時なのか知らないことに気がついた。
腕時計を見ると、意外にいい時間で、もう9時前だ。
でもこれで終電って。
「休日ダイヤだから。バスのほうが遅くまで走ってるから、今度もし逃したら、それで帰るといいよ」
「本当ですか、今日もそれで帰ります。バス停は近いですか?」
「バス道も雨で埋まるから、駅間の運行はもう終わってると思うよ」
「………」
自分の世間知らずに情けなくなった。
こっちに来て、時刻表を見てから駅に行く習慣も、なかなかつかなかった。
自分が何を知らないのかわからないので、こんなふうに失敗するまで、足りない知識にも気がつかない。
バスが走れないってことは、当然タクシーもダメだろう。