冷たい汗が、身体を伝う。

これだから嫌なんだ、占いとか言って、質問攻めにして。

見えてるのか見えてないのか、はっきりしてよ。


もし見えてるんだったら、教えてよ。


――俺は結局、どうすればよかったの。








庭先に、女の子が立っていた。

見覚えのある制服は、かつて千歳が着ていたものだった。

その子はBを見ると、びくっと反応して。

遠慮がちに、会釈をした。








女亭主がいれてくれた、ブランデー入りのコーヒーを持って部屋に戻った。

集会所の暖炉の火に比べると、個室の空調の温かさは無機質で、冷えた身体は、なかなか震えがとまらない。


ごめんなさいね、と主人は申し訳なさそうに言った。

本当にもう無理、と懇願するように占いを中断させたBを、当然ながら彼女は心配し。

だけどどこか、それじゃダメだと叱咤しているような気配もあり、Bは逃げたくなって、実際、逃げた。



『このカード、あげるわ』

『ごめん、いらない』

『いいから、今のあなたを象徴するカードよ』



記された“JUDGEMENT”の文字を、Bの頭はとっさに“判決”と訳した。

部屋に置かれた聖書が目に入った時ひらめいて「あっ“審判”か」と思わずひとり言を漏らし。

それでも残念ながら、そのカードにどんな意味があるのか、Bにはわからなかった。


戒めなのか、お守りなのかもわからない。

だけど、なんとなく。

近いうちに、何かが起こるんだろうと。


そんな予感がした。